ピアノを始めたのは4歳のとき、昭和49年でした。
そのころ両親、2歳年下の弟とともに、分譲されたばかりの大阪の団地に住んでいました。
団地の住民はファミリー層が中心で、幼児がそこらじゅうに溢れているような環境です。
ピアノを売り込むには格好の市場だったのでしょう。
ある日浜松からピアノメーカーの営業さんがやってきて、「お子さんにピアノを習わせませんか」と一軒一軒に声をかけたようなのです。
このとき両親が私に「ピアノ習いたい?」と尋ねたところ、「習いたい」と答えたのだそうですが、もちろん記憶はありません。
そもそも意味が分かって「習いたい」と答えたかどうかも不明です。
しかし、そんな幼児の言葉を真に受けて、両親はアップライトピアノを買ってくれました。当時の父の給料の3か月分くらいの値段だったそうです。
最初についた先生は、音大を出たばかりのY先生(女性)でした。
決まった曜日の決まった時間に、家までレッスンしに来てくれました。
大阪弁の口の悪い先生で、下手に弾くと手をはたかれました。
同年代の方と話すとピアノの先生に手をはたかれたエピソードが続出するので、当時はそれが普通だったのでしょう。
「先生が怖くて嫌だった」という声をよく聞きますが、私は手をはたかれても平気でした。
もちろん「えー!」とは思ったのですが、それで落ち込むこともなく、先生やピアノを嫌いになることもありませんでした。
平凡な子どもだったので、自分からピアノに向かうことはあまりなかったようです。
よく母から「1日30分は弾きなさい」と言われ、「はーい」と返事をしてピアノに向かっていました。
自分から進んで練習するほど熱心ではなかったものの、毎日弾くことが苦痛でもなかったのでしょう。
そんな生ぬるい感じで、私のピアノ歴はスタートしました。